事業創造大学院大学

2025年4月、事業創造大学院大学は
開志創造大学(仮称)へ名称変更予定です。

お知らせ

2018.08.01 お知らせ

誌上講義:オープンデータを活用してビジネスチャンスをつかめ!(教授 杉本 等)

ビックデータはよく耳にしますが、「オープンデータ」を知っていますか?ビッグデータは単純にデータ量が多いデータと言えます。オープンデータは、自治体や企業などが持っているデータのうち個人情報などを除いた、公開可能なデータのことです。その量が多ければ、ビックデータとも言えます。オープンデータの大きな利点は、無償で誰でも自由に二次利用が可能なところです。

政府も推進しています

オープンデータの活用については、2013年のG8における「オープンデータ憲章」への合意など世界的な流れとなっています。日本では、2012年のIT戦略本部による電子行政オープンデータ戦略の決定から、2016年の官民データ活用推進基本法、2017年の官民データ活用推進戦略会議のオープンデータ基本指針の決定、官民データ活用推進基本計画の閣議決定および2018年に修正計画が閣議決定されています[1]。

海外におけるオープンデータに関わるビジネス例

以前よりよく紹介されているビジネス例を2つ示します。

1つ目は、The Climate CorporationのTotalWeather Insuranceです[2]。国立気象サービスがリアルタイムに提供する地域ごとの気象データと、農務省が提供する過去60年の収穫量データ、さらに2.5平方マイル単位で取得した土壌情報などを活用して、地域や作物ごとの収穫被害発生確率を独自技術で予測します。この予測結果に基づいて、顧客である農家あるいは農場ごとに保険をカスタマイズして販売しています(図1)。

図1:Total Weather Insurance

図1:Total Weather Insurance

2つ目は、Metropolitan Regional InformationSystemsのHomesDatabaseです[3]。不動産に関するさまざまなオープンデータを元に、例えば学校に関しては、生徒数、先生一人当たりの生徒数、生徒一人当たりの支出額、各学年の生徒数などに加えて、学力のテスト結果まで知ることができます。環境に関しては、降水量、年間の降雨日数、年間の晴天日数、快適指数などに加えて、大気の品質、一人当たりの医師の数、医療経費指標、紫外線指数などまで知ることができます。

図2:BRIGHT HOMES COVERAGE(http://www.brightmlshomes.com/)

図2:BRIGHT HOMES COVERAGE(http://www.brightmlshomes.com/)

日本におけるオープンデータに関わるビジネス例

オープンデータを利用し、有料サービスへ結びつけ収益を得ている2つの例を紹介します[4]。

1つ目は、どの図書館に読みたい本があるかわからないという課題を解決した図書館検索のカーリルです(図3)。図書館ごとに公開されている蔵書・貸出情報を利用し、Webサービスとして提供しています。

図3:カーリル(https://calil.jp/)

図3:カーリル(https://calil.jp/)

2つ目は、圃場の紙での管理や農薬データベースがないという課題を解決したアグリノートです。農薬データは、(独法)農林水産消費安全技術センターの農薬データを利用しています。

図4:アグリノート(http://www.agri-note.jp/)

図4:アグリノート(http://www.agri-note.jp/)

日本ではこの後どのようなデータがオープンデータとなるのか

官民データ活用推進基本計画において、重点項目に挙げられているデータは下記などです[1]。
・都市計画に関するデータの利用環境の充実
・気象情報の利活用の促進
・統計データのオープン化の推進・高度化
・訪日外国人観光客等に有益な飲食店や観光資源等の観光情報のオープンデータ化推進
・農業関係情報のオープンデータ化の推進
・建設における3次元データの利活用の促進
・交通事故統計情報のオープンデータ化の推進
・犯罪発生情報のオープンデータ化の推進
・海上活動情報のオープンデータ化
・ICTを活用した歩行者移動支援の普及促進に向けた取組の推進
・公共交通機関の運行情報(位置情報等)等のオープンデータ化

これらのデータを自由に利用できるとしたら、みなさんならどのようなビジネスを思いつくでしょうか?

ビジネス化に向けて

普段生活していて、この課題は解決できないかな、と気づくところから始まります。一方で、データの加工や解析、可視化には、ITの力が必要になります。しかしながら、ビジネスを起こす人は、必ずしもIT技術者ではありません。要は、解決するためのアイデアを持った自分を中心に、人的ネットワークを形成し組織化、その上でビジネスプランを作成すればよいのです。

常に、身の回りのことやいろいろな人との会話に積極的に興味を持ち、ビジネスチャンスを考える習慣を身につけましょう。

参考文献:
[1]https://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/kettei/pdf/20180615/siryou1.pdf(2018年6月21日参照)
[2]http://okfn.jp/2013/09/17/open-data-business-model-twi/(2018年6月21日参照)
[3]http://okfn.jp/2012/11/15/opendatabiz9/(2018年6月21日参照)
[4]http://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/shoujo/it_yugo_forum_data_wg/pdf/h25_02_06_00.pdf(2018年6月21日参照)

教授 杉本 等

教授 杉本 等

教授 杉本 等
【担当科目】ビジネスプラン作成法、演習Ⅰ・Ⅱ
東北大学大学院工学研究科修了。博士(工学)。日本大学工学部情報工学科にて助手、専任講師。地域の情報化に貢献。その後、(株)パドラックを立ち上げ、現在代表取締役。オープンソースに特化したビジネスを展開。また、NPO社会起業家や地域リーダー育成などの団体の立ち上げにも携わっている。

※この内容は、広報誌(JPress)の記事を転載したものです。
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