事業創造大学院大学

2025年4月、事業創造大学院大学は
開志創造大学(仮称)へ名称変更予定です。

お知らせ

2008.03.24

ダイバーシティーマネジメントと外国人登用(准教授 富山栄子)

 近年、ダイバーシティマネジメントに取り組む企業が増えています。ダイバーシティーとは多様性のことで、ダイバーシティーマネジメントとは多様な性別・人種・国籍・宗教・キャリアを、企業経営に生かそうとする活動であり、多種多様な人材を確保、組織し、それぞれの価値観を事業に生かしていくことです。多面的な思考を取り込むことで、市場に対する柔軟な対応を可能にします。グローバルで事業を展開していくには今まで以上に現地社員を活用しダイバーシティーを高めていくことが求められています。
 『わかりすぎるグローバル・マーケティング~ロシアとビジネス~』で三井物産の日ロ合弁企業の事例で書いたように、海外子会社のトップには現地人を採用したほうが現地人社員を動機付けるにもより効果は高いですし、現地人社員の勤労意欲も高まります。一方、日本企業の海外子会社のトップには日本人という会社が多く、現地法人の外国人従業員は能力向上や幹部への登用の機会がなければそうした機会がある欧米企業へ転職する傾向が多く見られます。
 そうしたなか、花王は、これまで日本から社長など経営陣を派遣してきましたが、将来の経営幹部を育てるとともに、優秀な人材の流出を防ぐ狙いで、2009年3月期から、アジア8カ国(中国、台湾、タイ、インドネシア、マレーシア、シンガポール、ベトナム、フィリピン)地域の現地法人の採用社員を対象に、日本の本社や現法の経営幹部に登用する仕組みを導入することにしました。対象となる役職は現法の社長と生産、商品開発、営業などの責任者です。アジア全体に約80ある役職のうち現在は約7割を日本人が占めていますが、異動や退職でポストが空いた際に、その下にいる外国人の幹部候補230人の中から最適な人材を昇格させ、日本の本社もアジアの現法から幹部候補を受け入れるそうです。
 今後グローバル市場で競争していくためにはグローバル市場の環境の多様性に対応していく必要があります。環境の多様性に対応するためには、組織内部にも同程度の多様性が必要となります。製品開発には研究者、製造関係のエンジニア、マーケティング担当者など、さまざまな職能に属するメンバーでクロス・ファンクショナルな製品開発チームを構成し多様な問題に対処しているのと同様に、グローバル市場で勝ち残っていくにはグローバルに通用する優秀な外国人従業員の活用・登用が求められています。
 わが事業創造大学院大学にも、中国、ロシア、イギリス、ベトナム国籍の大変優秀な留学生が学んでおり、4月からはさらに、ミャンマー、インド、ベトナムからの非常に優秀な留学生が入学してくる予定です。彼らには将来グローバル市場で展開するビジネスの要として活躍してほしいと期待するとともに、そうした「場」を是非、日本企業にも構築してほしいと思います。