事業創造大学院大学

2025年4月、事業創造大学院大学は
開志創造大学(仮称)へ名称変更予定です。

お知らせ

2008.04.14

ブルー・オーシャン戦略と新興国ビジネス(准教授 富山栄子)

 事業創造大学院大学の入学式が先般終わりました。バックグランドが多彩で、国籍、年齢もさまざまな大学院生が入学されてきました。懇親会の席上、日本とインドでIT企業を経営されておられるインド人の院生がスピーチをされました。「私はインドと日本のIT企業だけでなく、両国間の様々なビジネスに取り組んでいきたい。インドではまだまだ未開の市場がたくさんあるので大学院でビジネスを学んでインドと日本のビジネスをどんどんとやっていきたい」と抱負を語られました。その後、別の日本人院生と、ある製品をインドへ輸出するアイディアについて意見交換をしました。インドは約11億人の人口を有し、急速に発展している新興国です。いろんな意味で「ブルー・オーシャン」であると言えます。

 フランスの欧州経営大学院(INSEAD)教授のW・チャン・キムとレネ・モボルニュにより、2005年2月に『ブルー・オーシャン戦略』が発表され話題になりました。彼らによると、「ブルー・オーシャン」とは今はまだ存在していない市場、つまり、競争すら存在しない未知の市場空間のことを指します。「ブルー・オーシャン」では企業は新たに需要を掘り起こそうとするため、利益の伸びも大きく、スピードも速いです。ブルー・オーシャンという表現は未だ誰も足を踏み入れたことのないより広く深い可能性を秘めた市場を指しています。利益の成長、無限の可能性という意味で広大で深い青い海のようであるという表現です。

 これに対する概念が、「レッド・オーシャン」です。「レッド・オ-シャン」とは今日の産業すべてで、既知の市場空間のことを言います。「レッド・オーシャン」では各産業の境界はすでに引かれていて、誰もがそれを受け入れています。各社ともライバルをしのいで既存のマーケットの中で多くを奪い取ろうとしていますが、競争相手が増えるにつれて、利益や成長の見通しは厳しくなります。レッド・オーシャンでは、多くの業界で供給が需要を上回っています。そのため、製品やサービスのコモディティ化(機能の差別化をとることができず価格競争に陥っている状況)が進み、価格競争がおき、利益率は縮小し、赤い血みどろの戦いになります。

 ライバル企業と競い合うレッド・オーシャンもなくなりはしないでしょう。しかし、先進国の多くの業界で需要が供給を上回っており、市場占有率争いが厳しいなか、新しい利益機会と成長機会をつかむための「ブルー・オーシャン」を切り開いていくことが求められています。大学院で学びながら、その人脈をフルに活用しつつ新興国とのブルー・オーシャンを開拓していけるなんて素晴らしい!と思った懇親会でした。

(W・チャン・キムとレネ・モボルニュ『ブルー・オーシャン戦略』有賀裕子訳、2005、ランダムハウス講談社:この著書はビジネスプラン作成にも役立つと思います。)