事業創造大学院大学

2025年4月、事業創造大学院大学は
開志創造大学へ名称変更予定です。(仮称・設置構想中)

お知らせ

2008.04.25

小国フィンランドのノキアに学ぶ(准教授 富山栄子)

 一昨年モスクワへ調査へ行ったときに携帯電話をレンタルしました。携帯電話はノキア製で、使い勝手が良かったことを覚えています。

 ノキアは、元々木材とゴムを取り扱っていた会社でした。それが、今では世界の携帯電話市場で約35%のシェアを占める世界No.1の携帯電話端末メーカーに変貌を遂げました。

 今から30年前のノキアには、技術もスキルもフィンランド国内にはなかったので、ノキアは海外へ目を向けました。新技術がある場所であればどこでもよかったのです。そしてカリフォリニアで携帯電話の設計に着手しました。一方の日本の携帯電話端末メーカーはどうでしょう?日本国内市場で高額の通信料に支えられ、すべてを自社で抱え込む垂直統合型で自社技術にこだわり、閉ざされた国内市場の中でのみ展開してきました。携帯電話はデジタル製品ですので、技術よりも情報処理手順の「標準化」が競争力を左右します。国内では「標準」であっても海外と仕様が異なれば海外では売れません。世界の主流であるGSMやCDMAという通信規格を採用せず、長くPDCという日本独特の通信規格を使い続けました。その結果、「iモード」のような先進技術を開発しているにもかかわらず、ソニー・エリクソンを除いて、世界シェアでは10%にも届きません。

「日本の携帯電話市場はガラパゴス諸島である」と揶揄されています。ガラパゴス諸島はエクアドル本土から太平洋をおよそ 1,000km 隔てて点在しており、およそ600万年前の海底火山の活動によって誕生しました。ガラパゴス諸島は1978年世界で最初に登録された自然遺産の一つで、珍しい生き物の宝庫となっています。体重100キロを超えるゾウガメや、恐竜のような奇妙な姿をしたイグアナ、世界で唯一熱帯に暮らすペンギンなど、この島でしか見られない固有の種類が多いです。1835年島を訪れたイギリス人チャールズ・ダーウィンは、こうした生き物たちの観察を通じて進化論発想のきっかけを得ました。ここではゾウガメやイグアナなど多くの生物が大陸とは異なる進化を遂げています。

 このように大陸とは隔離されたガラパゴス諸島でのみ、生きながらえてきた独特な生き物たちの生態系になぞらえて「日本の携帯電話市場はガラパゴス諸島である」と言われているのです。すなわち、日本という大陸とは隔離された市場でしか、生きながらえることができない・・・という意味です。

 また、「パラダイス鎖国」という言葉も流行しています。国内でまあまあ幸せだから海外に出ようとしないという意味です。閉じられた環境で生物が特殊な進化を遂げたガラパゴス諸島のように、日本のIT産業をはじめとした各産業が国内でしか通用しないような道をたどりつつあることは懸念されるべきことです。

 自戒を込めてノキアに学びたいと思います。

1.視野はグローバルに。情報は世界から。市場は国内に限らない。

2.自社にない経営資源は外部から調達せよ。自前にこだわらない。

3.国内の成功モデルを海外に援用するのでなく、成功モデルを確立すべく海外に進出。