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誌上講義:バリューチェーン・リデザインの戦略革新(五月女 政義 教学担当副学長・研究科長・教授)

お知らせ

2016年08月29日

業界バリューチェーンの構造変化

 

日本の伝統的な業界構造は「川上から川下に向かって業種によって統制されたシステム」でした。一部業種では、メーカーが卸のみならず小売店までも系列化した「川上から川下に向かってメーカーによって統制されたシステム」が構築されました。こうした中、近年は小売を中心に消費者ニーズを起点に再編された「業態化」が進展しているのにもかかわらず、多くのメーカーや卸・問屋は未だに業種別に編成されており、業界バリューチェーンが垂直的な矛盾を抱えているというのが現状です。

業種対業態の垂直的な矛盾

 

バリューチェーン・リデザインの7つの戦略代替案

 

業界バリューチェーンの構造変化と立ち位置に着目すると、下記の7つの戦略代替案が抽出されます。

バリューチェーン・リデザインの7つの戦略代替案

 

①水平統合戦略
同業他社のM&Aや経営統合により、規模・シェアの拡大によるスケールメリットを享受するとともにコスト、技術、マーケティングでシナジーを発揮することが狙いです。一方で、水平統合戦略は既存の業界の枠組みを前提としているため、ビジネスの本質、ビジネスモデルそのものは従来と何ら変わるものではありません。

 

②川上機能統合戦略
川上の機能を取り込むことにより、原材料の供給源からコントロール・付加価値の取り込み、コスト面での優位性確保、部品レベルからの差別化、キーデバイスのブラックボックス化などを狙いとします。一般的に川上の採算ロット>自家消費量となるため、安定した工場稼働率が確保できるか否かを見極めた上で、意思決定することが重要となります。

 

③川下機能統合戦略
自ら川下に進出、川下の機能を取り込むことにより、消費者/エンドユーザーとの直接的な接点構築、川下の付加価値の取り込みを狙いとします。より川下の顧客ニーズへの迅速な対応や価値共創による新たな価値創出、不確実性の回避も期待できます。最大の障壁は、既存顧客とのコンフリクトで、これを解決できれば新たな成長と高収益を両立できる可能性があります。

 

④新カテゴリー創出戦略
既存業界の枠組みを超えた商品・サービスを顧客ニーズに基づき再編集することにより、新たなカテゴリーを創出、需要創造を図るものです。顧客は業種の枠を超えた新たなカテゴリーで編集された商品・サービスをワンストップで享受でき、既存プレイヤーよりも価値のある新たなカテゴリーで競争優位を構築できる可能性があります。

 

⑤ワンソースマルチユース戦略
既存商品・サービスを業界の枠組みを超えて提供することにより、潜在的な需要を掘り起こし、顧客の獲得を図るものです。顧客にとっては商品・サービスの選択・利用機会の拡大という価値が提供され、企業にとっては追加コストが最小限のワンソースマルチユースで顧客数の拡大や利用頻度の拡大が期待でき、新たな市場を切り開ける可能性があります。

 

⑥グローバルバリューチェーン戦略
国内は成熟市場であってもグローバルレベルでは成長市場という業界が多々存在しています。国内ではコモディティ化していても、現地企業よりもはるかに先進的・高品質な商品・サービスを提供できる可能性があります。所得水準と連動する市場やサービス業など閉鎖的なマルチドメスティックな業界は、時間差マーケティングを展開するチャンスを秘めています。

 

⑦新規バリューチェーン参入戦略
全く異なる新規バリューチェーンへ参入する新規事業戦略です。成長分野ということで飛び地に参入する企業も多く見られますが、既存プレイヤーを上回る価値を創出することが大前提となるため、地続きの業界への参入と比較するとどうしても成功確率は低くならざるを得ません。

 

以上、バリューチェーンに着目して7つの戦略代替案を見てきましたが、バリューチェーン・リデザインの切り口としては、
●垂直分業されている業界では、バリューチェーンを再編・統合、川下の顧客価値の取込み
●垂直統合されている業界では、バリューチェーンを分断、特定の機能・顧客価値に特化
といった逆説的な発想が有効となります。

 

教学担当副学長・研究科長・教授
五月女 政義

【担当科目】経営戦略、イノベーション論、演習Ⅰ・Ⅱ
慶應義塾大学経済学部卒。慶應義塾大学大学院経営管理研究科修了(経営学修士)。
消費財メーカー、外資系コンサルティング会社を経て、92年に㈱三菱総合研究所に入社、 主任研究員、経営戦略研究室長、主席研究員等を歴任。20年以上にわたり、メーカーから流通・サービス業に至るまで幅広い分野で戦略ビジョン、中期計画、中長期事業戦略/ビジネスモデル革新、新規事業戦略などに関する戦略コンサルティングを実施。

 

※この内容は、広報誌(J-PRESS)の記事を転載したものです。
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