【教員レポート】宇田 賢一 教授 ・・・ テーマ「還暦ベンチャー」

お知らせ

2012年08月28日

事業創造大学院大学では、大学院と社会を結ぶ広報誌「J Press」を通じて
より多くの方々に、本学専任教員の大学院での教育活動や取り組みなどを
ご紹介しております。

 

今回は、「通巻28号」で掲載された宇田賢一教授についてお伝えします。

 

 

宇田 賢一 教授

 

担当科目: アントレプレナーシップ論、演習Ⅰ・Ⅱ

 

 

【プロフィール】

 

大阪市立大学法学部卒

 

日本生命保険(相)入社。
株式運用畑中心に勤務後、日本ベンチャーキャピタル㈱取締役投資部長、
事業創造キャピタル㈱代表取締役と、20年弱に亘り一貫してベンチャービジネス
への投資・支援活動に携わる。
極めて実践的で豊富な知識・経験を有する。
1997年~2002年同志社大学大学院商学研究科ベンチャーコース、非常勤講師。

 

 

【ピックアップテーマ】 『 還暦ベンチャー 』

 

交流サイト(SNS)最大手の「フェイスブック」が、5月18日に
米国・ナスダック市場に上場しました。

 

世界中に9億人を超える利用者を持ち、売上高3,000億円、
時価総額5.6兆円(6月5日)の超大型IT関連企業の登場です。

 

19歳のハーバード大学生であったマーク・ザッカーバーグが
2004年2月に創業し、8年で実現したアメリカンドリームです。

 

かたや日本では、これより少し前の3月15日に東証マザーズに
インターネット専業生命保険「ライフネット生命保険(株)」が上場
しました(6月8日時価総額420億円)。

 

この会社を率いる出口社長は、ザッカーバーグとは親子ほども
年齢差がある63歳の元日本生命のサラリーマンです。

 

58歳で起業し6年後に上場を果たした「還暦ベンチャー」です。

 

起業のきっかけは、長年の友人でありベンチャー投資も手掛ける
投資会社社長の谷家氏(当時40歳)が、生保業界の裏表を知り尽くした
出口氏(当時は子会社のビル管理会社に転籍)から「高コスト体質で
非効率な生保業界の実態」を聞き、ここに起業のチャンスありと考え、
出口氏のパートナーとしてボスコン出身で、起業を志していたハーバード
ビジネススクール在学中の岩瀬氏(現ライフネット副社長、当時30歳)を
引き合せたことから始まります。

 

岩瀬氏は、「生保の悪しき慣習を打破し、シンプルな商品をネットで
販売することにより、子育て世代の保険料を半額にし、安心して
子供が産める世の中にしたい」という事業コンセプト及び事業化の
可能性並びに出口氏の魅力にひかれて一緒にやることを決意します。

 

2006年10月、業界事情に熟知したベテランと調査分析・プレゼン能力に
優れた若者の凸凹コンビの誕生です。

 

岩瀬氏は、自らが信じるビジネス成功の秘訣「①市場が大きいこと、
②市場が非効率であること、③変化によりその不便(非効率)が取り除けること、
この3つが揃ったところにビジネスの成功がある」に照らし合わせたとき、
この事業は成功確率が高いと確信したようです。

 

すなわち、①アンケート調査によれば、市場は5兆円以上見込める
、②多数の女性外交員が営業の主力であるが、大量採用・大量脱落
(2年で80%が退社)によりコストがかさみ保険料が高止まりしている、
また種々の特約を付加することにより保険商品が複雑化され保険料
アップに繋がっている、さらに保険料の算定根拠もディスクローズされて
いないなど非効率で不明朗な経営が行われている。

 

従って、③商品をシンプルにし、ネットで販売することにより、同じ商品であれば
保険料が既存の保険会社の半分程度で提供できることから非効率は克服できる
と確信したようです。

 

また、既存生保は、営業の主力である女性外交員の生活を脅かすようなネット販売
やシンプルで保険料の安い商品へのシフトは、自らのビジネスモデルを破壊すること
になるため参入の脅威は少ないと考えました。

 

事業の立ち上り資金は谷家氏の投資会社とマネックスから調達し、その後は、
この凸凹コンビが各々の有する広範なネットワークへ専門能力を発揮したプレゼン
を行い、今時のベンチャーとしては驚くほどの資金 135億円を調達しました。

 

岩瀬氏によれば、「わかりやすく整合性のとれた事業計画書及びどんな質問にも
データを交えて答えられる周到な準備並びに優れたプレゼン能力と出口・岩瀬の
情熱、熱い思いが、投資家の方々から『期待していますよ』という言葉を引き出した」
と言っています。

 

因みに投資先としては、三井物産、リクルート、新生銀行、セブン&アイホールディング、
VC等々で、これら大会社の担当者の心を湧き立たせたようです。

 

事業は順調に推移し、2012年3月末の契約件数は11万8千件と増加の一途ですが、
同3月期の売上高は38億円、当期利益は△9億円と利益を計上するまでには至って
いません。

 

そのうち競合もたくさん出てくることでしょうし、上場により世間の風にさらされることも
多くなり大変でしょうが、「還暦ベンチャー 頑張れ!」、「我が同期 頑張れ!」。

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