誌上講義:「金融と社会」論とは

お知らせ

2016年06月03日

 

教授
唐木 宏一
Karaki Kouichi

 

【担当科目】
アントレプレナー・ファイナンス
コーポレートファイナンス
演習Ⅰ・Ⅱ

 

㈱三井銀行に入社し、支店での13年余りの融資渉外業務を通じ、与信や企業財務等にかかわる知識技能を身につける。同社退社後、一橋大学大学院商学研究科にて「企業と社会」「金融と社会」を研究し、修士(商学)、博士(商学)学位取得。修了後は大学非常勤講師や、社会起業家、NPOなどの支援育成に携わるほか、個人研究所(社会的金融研究所)を設立し、論文等を執筆、発表。

 

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本学の講義では「アントレプレナー・ファイナンス」と「コーポレート・ファイナンス」という“普通”のファイナンスを担当していますが、最も関心のあるテーマは「金融と社会」です。経営学の領域では「企業と社会」というテーマが、90年代より確立され始めています。13年余り務めた金融機関の退職後に大学院で勉強していくなかで、「企業」ではなく「金融」を対象として同じようなことを考えてみようと思ったのが、その発端です。現実の金融の場に居たがゆえの問題意識が背景にあります。

 

では「金融と社会」とはどのようなことを考えるのかというと、多岐にわたる小テーマがあります。金融が社会にもたらすものとその理由であるとか、社会にとって好ましい金融とはどのようなものであるかとか、わが国でも関心が高まり始めている「インクルージョン(包摂)」の金融版であるとか、金銭価値への換価評価法が確立されていないような「リターン」についてであるとか、果ては金融の前提である交換メカニズムにとどまらず(金融の定義は、異時点間の交換である)、互酬や再分配を含めたモノ/カネの望ましい流れ方といったことまでを射程とします。「ソーシャル・ファイナンス」という言葉を目にする機会が近年増えてきましたが、それを包含する概念です。

 

抽象的な説明だけではピンとこないかもしれませんが、2006年のノーベル平和賞受賞者であるグラミンバンク(マイクロクレジット)は金融包摂の取組みですし、昨今注目を集めるクラウドファンディングなども取り上げるべき対象となります。包摂が求められる原因の「金融排除」は、日本の近未来に間違いなく到来するであろう(人口減に応じた金融機関の撤退の帰結)問題です。

 

こういった現象を、思いつきや自分の得意分野への牽強付会ではなく、オーソドクスなファイナンスや経営学、社会学等の確立されたロジックやツールを利用して分析すること。それが「金融と社会」論です。

 

※この内容は、広報誌(J-PRESS)の記事を転載したものです。
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