事業創造大学院大学

2025年4月、事業創造大学院大学は
開志創造大学(仮称)へ名称変更予定です。

お知らせ

2008.12.22

AVEDAの環境に優しい経営とブランディング(准教授 富山栄子)

2008年もいつのまにか終わりに近づいてきました。
今年は夏に米国ミネアポリスに行ってきました。米国のヘアケアメーカー“AVEDA”の社長へのインタビュー調査をするためです。“AVEDA”は、米国やヨーロッパで大変人気がありますが、日本でも東京や大阪などの首都圏を中心に人気を博しています。

もともと、AVEDAは植物由来の成分をベースとしたヘアケア製品のメーカーとして、1978年、世界を拠点に活躍していたヘアスタイリスト、ホースト レッケルバッカー氏により、米国ミネソタ州、ミネアポリスに創設されました。現在、ヘアケア、スタイリング、スキンケア、ボディケア、メイクアップ、業務用ヘアカラー、アロマオイル、アロマ製品等、600品目以上の製品を製造しています。AVEDAの製品の優れた点は、すべて植物エッセンスを主成分とし、化学薬品などをほとんど使わずに、可能な限り有機栽培された植物や非石油系のミネラルなどを使用して製造されている点です。身体やお肌、髪に有害な化学薬品をほとんど使っていない点が個人的には魅力です。

美容院に行くといつも美容師さんから言われてきました。「頻繁に髪を染めると痛みますー!!」と。化学薬品から製造された毛染めは髪にダメージを与えますが、有機栽培された植物から製造された毛染めであれば髪にダメージが少ないのでは?そうした成分で製造された化粧品もお肌に優しいのでは?と思っています。

AVEDAは化学薬品の代わりに、南アフリカや西オーストリア先住民など世界中の伝統的なコミュニティから植物などの原料を調達し、供給者に適正な対価を保証しビジネスパートナーの関係を築いています。そして、オーガニック認定の植物を育てている農家や栽培者たちと一緒に取り組み、彼らと経済的・文化的にコラボレーシヨンすることにより、持続可能なパートナーシップを築いています。これによって地元のコミュニティは安定した生活が可能となっています。まさに、「フェアトレード」を実現しているのです。

ほかにも、環境に配慮した製品パッケージの開発や店舗や施設の建材の調達を進めるなど、環境に配慮しています。再生容器(PRC)の利用を推進し、再生率を高くすることで業界をリードしています。また、米国ミネソタ州本社工場での使用電力は、100%が風力発電の電力購入によるものです。

そして、こうした徹底した環境活動が最も安全かつリターンの高い投資となっています。環境活動は、他社の媒体に依存せず、自社からメッセージを発信できるので、①安い、②正確に情報が伝わる、③長期にわたる積み上げ型のブランディング、④ビジョンや経営姿勢を詳しく社内外に伝えることができます。
また、環境に優しい会社は従業員にも優しいのです。たとえば、AVEDAでは仕事時間中、疲れると、従業員はインド人スタッフについてヨガでリラックスすることができますし、社員食堂は、すべてオーガニックの食事です。

AVEDAのマーケティング戦略で注目すべきは広告宣伝費にほとんどお金を使っていないことです。これまでの化粧品業界は、高級紙への広告や、華麗な美女揃いのスーパー・モデルの起用、セレブとの関係性など、感性要因(ブランド名やブランド・イメージ、高級感あふれるパッケージのデザインや質感など)で競争してきました。AVEDAはこれを機能要因(原材料、安全性、環境負荷の少なさ)という方向へ切り替え(いわゆるブルー・オーシャン戦略)で成功しています。美人モデルを起用したテレビ広告をしない分なのでしょうか? AVEDA製品は、資生堂やカネボウの化粧品よりもかなり安いです。

企業の社会的責任(CSR)には
1.本業中心の中核的責任:雇用・経済
2.付随的責任(マイナスをふせぐ):公害、乱開発、誇大広告、欠陥商品、弊害
3.積極的責任(プラスの責任):企業市民、フィランソロピー(慈善活動や寄付)、企業メセナ(シンフォニーカー交響楽団の活動支援、美術展への協賛、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の公演などのイベントに協力など)
などがあります。

AVEDAの環境経営というCSR(積極的責任)活動は、費用対効果の高いブランディング手段となっています。
環境への取り組みは企業のイメージをアップさせるためのマーケティング戦略の中で重要な位置を占めています。環境に優しい企業、優しい商品が、企業のブランド力アップ、安心感に結びつきます。環境経営やフェトレードなどは、実は、CSR活動として最強の広報活動でブランディングであり、イメージアップをはかることができるのです。

たとえば、私の場合、化粧品のKBF(Key Buying Factors:顧客の立場から見た商品やサービスに対する購買決定要因)は、第一にお肌に害のないもの、肌に優しいもの、品質の良いもの、香りの強くないものです。そうした化粧品は、ランコム、カネボウ、オルラーヌ、資生堂、シャネル、クリニーク、ポーラ、ほかにも山ほどあります。どのメーカーでもあまりこだわりはないのですが、そうした中からどれを選択しようかとなると、南アフリカや西オーストリア先住民など世界中の伝統的なコミュニティの自立や環境経営にお金をかけているメーカーのものを選びたくなります。同じ買うなら、世の中で困っている人の自立に役立つものを買いたいからです。

以上をまとめると、AVEDAの経営は

1.顧客に高い効果をもたらしかつ地球環境に配慮した製品(化学薬品をほとんど使わない)を提供することで、ブランドの使命を実現しています。
2.環境経営により、長期にわたる積み上げ型のブランディングに成功しています。
3.フェトレードにより、先住民など生活が苦しい世界の人たちのコミュニティを持続可能にすることに寄与し、そうした調達活動がAVEDAのファンを増やし、さらなる企業のブランド力アップへとつながっています。

環境経営やフェトレードなどの世のため人のためになることをすることは、何よりも費用対効果の高いブランディング手段だといえるのではないでしょうか!