事業創造大学院大学

2025年4月、事業創造大学院大学は
開志創造大学(仮称)へ名称変更予定です。

お知らせ

2010.08.23

ストックホルムでの学会報告(教授 富山栄子)

ICCEES2010世界大会の発表とパネル議長で、スウェーデンのストックホルムへ行ってきました。ストックホルムはすがすがしい天気で、快適でした。街行く人々の表情がとても明るくまばゆい限りでした。

今回報告したのは、科研の調査報告で“Entry and Marketing Strategies to Russian Market by Japanese, Korean Automobile manufacturers ―Case Study of Entry to Russian Market by Toyota, Hyundai & KIA Motor”というタイトルでした。

調査課題は、

1.現代自動車の中国、インド、ロシア、トルコ市場への参入、マーケティング戦略を比較して、ロシア市場との同質性と異質性を明らかにすること。

2.現代自動車が、いかにロシアの非消費者層を消費者層に変えたのか、そのために、どのようなマーケティング戦略と取り、どのようにして売ってきたのか。

3.日本のトヨタと現代自動車の参入様式とマーケティング様式を比較し、その同質性と異質性を明らかにすること。

にありました。

このうち、第一番目の論点については、次のように報告しました。

現代自動車にとって、インド、中国、アメリカ市場はロシア市場よりも大きいものの、ロシア市場も市場として大きく重要な市場である。なぜならば、現代自動車は、チェコ工場を除き、大きな市場がある国にのみ製造工場を設立している。また、現代自動車は、インド、中国、アメリカでは完成車製造の生産子会社を製造したのに対して、ロシア、トルコではKDの生産子会社を設立した。それは、トルコとロシアでは、適切なサプライヤーを見つけることが極めて困難であったからである。今後、ロシアでは7社の韓国のサプライヤーが現代自動車と同伴進出するが、工場設立前の段階では、現代自動車がロシアで部品を調達できるのはわずか約10%にすぎない。したがって、現代自動車にとって、インドや中国などへの参入と比べ、その同質性は、ロシアはインドや中国市場と同様に、現代自動車にとって大きく魅力的であること。異質性は、中国やインドと異なり、ロシアではふさわしいサプライヤーの確保が難しいことにある。そのため次のような参入様式を取ることとなった。インド、中国は、ライセンシングや、現地の独立ライセンシング組立業者による現地組立ての段階を経ずに、いきなり現地生産を開始したのに対して、ロシアはトルコと同様、ライセンシング、その後、現地の独立ライセンシング組立業者による組み立てを経て、現地に自社が組立のための組立工場を設立した点にある。その理由は、市場の大きさが中国やインドは大きく、KDの段階を経ずに一気呵成に自社による現地組立てを開始した方がよいとの判断による。
 
これに対して、コメンテーターの英国のフィリップス・ハンソン先生は、「ではロシアにとっては、現代自動車とトヨタ自動車のどちらの参入方式が望ましいのか」と問題提起をされました。

確かに、参入する方と参入される国とでは、望ましい参入方式というのは異なります。ロシアにとっては、トヨタの参入方式の方が望ましいわけです。国際学会は、様々な専門の方々が様々な角度から議論をしますので、思わぬ示唆を与えていただいたり、出会いがあったりで、非常に刺激的です。

さて、ストックホルムの町ですが、物価が高いと感じました。なんといっても、消費税25%は高いです!!H&M にもZARAにも価格調査に行ってきましたが、本店でも決して安くありません!!銀座のバーゲンの方が安いと日本の方が言っておられました。この国では観光客が一番損をしているそうです。この地に永住して、「教育費、医療費無料」を体験しないと、福祉のよさはわからないのだそうです。

 

夜は、22時頃まで明るく、若者が語らいながら、散歩してました。果物も野菜も何でもありました。にしんの酢漬けが、スウェーデン料理の代表のようです。美味でした!

 

トヨタ・スウェーデンへも調査に行きましたが、従業員はみな夏休みで、社長自ら車を運転して出迎えてくれ、コーヒーも入れてくださいました。従業員にとても優しい国のようです。
英語教育が小学校のころから徹底して行われており、タクシーの運転手さんもみな、綺麗な英語を話します。お店では、トルコ系の人達が、シシカバブーを売っているのが多いと感じました。

 

一方、やはり冬は寒いので、冬はアルコールをたくさん飲み、アル中も多いそうです。この点はロシアと一緒です。

何はともあれ、大変実りの多かった国際学会でした。このたび、特にお世話になった、京都大学経済研究所溝端先生、関西大学徳永先生、イギリスのフィリップス・ハンソン先生、京都大学塩地先生、東京大学ものづくりセンター李先生に心からお礼を申し上げたいと思います。